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【 仕事のレシピ化・仕組み化 】(20・21/23) 仕組み化できるのは「作業系」の仕事だけではない? さらに仕組み化を進めるための「仕事」の分解の仕方

▼『ESTRELA』誌 2017年2・3月(No.275・276)号

お金も時間も稼ぎだす「仕組み化」実践コラム 第22・23回

ここまでお伝えした内容をご実践頂ければ、「作業系」の仕事の仕組み化を進めることができ、以前よりも時間を生み出すことができつつあるのではないでしょうか。

生み出した時間で早く帰宅し、ゆっくり休んだり、趣味を楽しんだり、家族と過ごす時間を増やしたり、今までできなかった新たな社外活動を増やしたりして、まずは自分にご褒美をあげましょう。

そして気力・体力を十分にチャージしたら、仕組み化の次のステップに進んでみましょう。

ここからは、仕組み化の上級編の内容になります。

まだ作業系の仕事、具体的には「かんたんな仕事」や「何度もやる仕事」のチェックシート化等ができていない場合は、主に実践コラム④を参照して、まずはそちらの仕組み化を進めましょう。

これらができずに本稿の内容を実践しても、挫折する可能性が非常に高いです。

逆に、上記の内容ができていれば、本稿の内容を実践しやすいうえに、さらに大きな成果を得ることができます。

さて、「仕事」というものをその内容で大きく分けると、主に、

 ・簡単で繰り返し行うような誰でもできる「作業系」の仕事

 ・知識や経験を活かして臨機応変に課題を解決する「考える系」の仕事

の2つに分かれます。

ここで「仕事」をもう一つの側面で分けてみましょう。

「仕事」には、すでにその仕事を経験したり他の人に説明できたりする「知っている」ものと、逆に「知らない」ものがあります。

これら4つの要素をマトリックス表にまとめてみると、図1のようになります。

余談ですが、私が仕組み化のコンサルティングを行う場合、まずは各自の仕事を洗い出してもらいます。

続いてこのマトリックス表を説明し、洗い出してもらった各自の仕事を①~④にあてはめてもらい、①に該当する仕事から仕組み化を進めていきます。

マトリックス表を使って自分の仕事を整理することで、仕組み化で「やるべきこと」をはっきりさせるのと同時に、「(今は)やらなくてよいこと」を明確にすることで、目の前の①の仕事の仕組み化に注力してもらうのです。

もうお分かりの通り、まず仕組み化すべき仕事は

 ・①の【「作業系」かつ「知っている」仕事

です。

「作業系」の仕事であれば手順が明確なうえ、その手順もすでに「知っている」ので、チェックシート作りがしやすいからです。

①の仕事の仕組み化を進め、徐々に時間を生み出し、仕組み化自体に慣れてきたら、次は別の領域の仕事の仕組み化を進めてみましょう。

①の次に仕組み化の対象とすべき仕事としては、

 (1)① → ②

 (2)① → ③

の2パターンがあります。

それぞれのパターンの特徴や違いをみてみましょう。

(1)① → ②

「作業系」の仕事であっても、まだそのやり方や手順が分からない場合、そのチェックシート作りは意外とハードルが高いものです。

やり方が固まっていないため、すぐにチェックシートを作ることができず、また、作り直しもかなり多くなってしまい、なかなかチェックシート等が完成しなくて挫折しがちです。

したがって、②の仕事の仕組み化をする場合には、完成度にはこだわらず、まずは「その仕事の記録をとる」くらいの感覚でチェックシートを作りましょう

つまり、その作業をしながら、その一つ一つの行動をチェックシートに記録していくのです。

前稿でお伝えしたデュアルディスプレイを活用し、片方のモニターで作業を進め、もう片方のモニターに常時チェックシートを表示しておき、作業をする度に、その作業・行動の記録を残しましょう。

これでチェックシートの叩き台ができあがります。

まずは②の仕事の手順や段取りを完全に覚えてからチェックシートを作る、という方法もありますが、仕組み化するまでにかなり時間がかかります。

手間かもしれませんが、作業をしながら仕組み化を並行して進める、という方法が結局最も時間がかかりませんし、効率良く仕組み化を進めることができます。

(2)① → ③

一般的には仕組み化ができない、もしくは仕組み化がしづらいといわれる「考える系」の仕事です。

しかし、実は「考える系」の仕事も仕組み化できる余地があるのです。

特に「知っている」仕事であれば、それをパターン化することで再現性を得ることができうるからです。

それでは、そのパターン化できる仕事をどのように取り出すのでしょうか。

数々の自身の仕事の仕組み化とコンサルティングを行ってきた結果、「考える系」の仕事はさらに分解できると考えました。

それが図2です。

「仕事」は、多数の「作業」の集まりです。

「考える系」の仕事を分解すると、その作業の中には、実は「作業系」の作業が多数含まれているのです。

この「考える系」の仕事の中に含まれる「作業系」の作業のことを、私は「隠れ作業系」と呼んでいます。

それが①’、②’です。

まずは、私自身の仕事で実際にあった例を出してみます。

現在は法改正によりこの方法も容易ではなくなりましたが、以前、税理士の仕事の一環で、不動産の購入タイミング・消費税の計算方法の選択・申告期間の選択などの最適な組み合わせをシミュレートし、最も納税額が少なくなる選択肢を提案する仕事をしていました。もちろん合法の節税策です。

何も対策を打たなければ多額の納税が発生してしまうところ、綿密なシミュレートの結果、納税額を減らすどころか、数百万円、数千万円、時には数億円もの消費税を還付してもらうことができるのです。

このスキーム作りを行っており、社歴が長く、経験が豊富な先輩税理士でもかなりの時間を使ってこのシミュレートをしていました。

私もこの仕事を行っており、当初は1週間以上もかけることがありました。税務の知識を駆使して多数のパターンを考案する、熟練の専門家が行うべきまさに「考える系の中の考える系」の仕事といった印象でした。

しかし、仕組み化のノウハウを身に付けた私は、『この「考える系」の仕事の中に、何かパターンのある作業はないか?仕組み化できる作業はないか?』と考えるようになりました。

その結果、

・シミュレートで使う数字はほぼ一緒

・その数字が記載されている各資料もほぼ一緒

・その記載箇所すらほぼ一緒

・検討すべき消費税の申告方法は限られている

・検討すべき消費税の課税期間のパターン・組み合わせも限られている

・申告方法や課税期間の違いによって増減する税理士報酬も決まっている

といったように、「考える系」の仕事の中にも多数の「作業系」の作業が含まれていることに気付いたのです。

これが「隠れ作業系」です。

ちなみにこれらを仕組み化した結果、シミュレートは消費税知識のない社員でも行うことができるようになり、数日かかった仕事が30分で終わるようになりました。

図2の③・④に該当する「考える系」の仕事は、そのすべてを仕組み化できるわけではありません。

また、つい思い込みで「考える系」の仕事は仕組み化できない、と考えてしまいがちです。

しかし100%仕組み化できないわけではなく、「考える系」の仕事を作業レベルにまで分解して考えてみると、「隠れ作業系」の作業が多数含まれていることが多々あります。

この「隠れ作業系」から仕組み化していくことでさらに時間を生み出すことができ、思っていた以上に仕組み化できる余地があることを感じて頂けることでしょう。

もう一つ、別の例を挙げてみます。

過去のコンサルティングで「営業」を仕組み化したことがありました。

太陽光発電設備の営業を強化したい会社でしたが、もしあなたがその会社に入社し、「設備を売ってきて」とだけ言われて外に放り出された場合、あなたはこの設備を売ってくることはできるでしょうか

この「行動化」できていない指示で動ける人はかなり少ないのではないでしょうか。

そこで、その会社でデキる営業マンにヒアリングをさせて頂いたところ、彼が必ずやっていることがありました。

たとえば、

 ・回るエリアを絞り、成約の可否に関係なく、1日30軒回る

 ・屋根に太陽光発電設備がないかを確認する

 ・屋根に設備があったとしても、離れや庭等に設備が置けそうな

  スペースはないかを確認する。

  スペースがありそうなら訪問。

  なければ次の家に行く

 ・売り込むのではなく、お得な情報だけを伝える

といったようなことをやっていたのです。

これらは再現性が高い作業でマネしやすく、単に「営業に行ってこい」と言われるだけよりも、かなり具体的な行動ができそうではないでしょうか。

一見、営業は「考える系」の仕事で非常に属人的な要素が多いように感じます。

しかし、仕事を作業レベルにまでかみ砕いてみると、実は誰でもマネできそうだったり、チェックシート化できたり、リスト化できたり、タスク登録できたりする作業はかなり多いのです。

それらの仕組み化を進めていくと、さらに時間を生み出し、人に仕事を任せていくこともできるでしょう。

そして、生み出した時間と余力を、仕組み化が難しい③・④にさらに注力していくことで、他社やライバルがマネできない体制を作っていくことができるのです。

以上より、①の仕組み化を行ったら、なんとなく②や③に着手するのではなく、ぜひ①’、つまり「隠れ作業系」の仕事の存在を強く意識しながら仕組み化を行ってみてください。

時間ができてある日なんとなく仕組み化をやろうと思っても、なかなか仕組み化すべき仕事や作業はすぐには思いつかないものです。

まずは日ごろから「隠れ作業系」を手帳やメモ帳、Excel等にまとめて、仕組み化のネタを溜めていきましょう。

それでは最後にワークをやってみましょう。

▼ ワーク:あなたの仕事の中で「考える系」の中に含まれる

     「隠れ作業系」の作業は何?

        ① チェックシート化できそうなものは?

        ② リスト化できそうなものは?

        ③ タスク登録できそうなものは?

▼ 制限時間:2分

▼ 目標:制限時間内に3つ

今回の考え方を知れば、これから仕事を行うたびに「作業系の仕事か、考える系の仕事か、それとも隠れ作業系の仕事か」と考えることができるようになります。

それらの仕事の中で、最もカンタンなものの仕組み化を行って練習をし、作業系の仕事のみならず隠れ作業系の仕事も仕組み化していきましょう。

劇的に時間をつくりだすことができるはずです。

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