【 仕事のレシピ化・仕組み化 】(6/23) あなたの作ったマニュアルは、なぜ読んでもらえないのか? 誰もが指示通りに動ける、マニュアルの文章の7つのコツ
▼『ESTRELA』誌 2015年10月(No.259)号 お金も時間も稼ぎだす「仕組み化」実践コラム 第6回 ここまでで、チェックシートづくりの対象にすべき仕事として、「かんたんな仕事」と「何度もやる仕事」を洗い出すことができました。 チェックシートづくりの練習を兼ねて、この「かんたんな仕事」や「何度もやる」仕事のチェックシートをつくっていきましょう。
その中でも特に、まずは「かんたんな仕事」から作ることをおすすめします。
今回は、つくったチェックシートをスムーズに読んでもらい、より活用してもらうための、チェックシートの文章のコツをお伝えします。
読みにくいチェックシートを作ってしまうと、せっかく作っても「死にマニュアル」化したり、ミスを量産したりすることになりかねません。
それを防ぐためには、「読んでもらう」ことを意識してチェックシートを作る必要があるのです。
基本的に「チェックシートを読む」ということは面倒に感じがられがちです。
なぜなら人は、“自分が興味のない文章” を読むことは、とても面倒や苦痛に感じるものだからです。
そこで、読み手がよりスムーズに読んで内容を実行できるチェックシートを作るときの注意点をお伝えします。
全部で7つありますが、これらを暗記する必要はありません。
一度読んで、書き方のコツをなんとなく知っておけばOKです。
み流すくらいの感覚で目を通してみてください。
▼ チェックシートを「作る」時の7つのコツ
① 一つの文章で、一つの指示を
② パワポ作りを意識する
③ 熟語は使わず、くだけた表現・話し言葉を
④ 最も効率の良い手順を書き出そうとしない
⑤ 指示は形容詞ではなく、数字を使う
⑥ パソコン操作は「 → 」ですっきり
⑦ 難しい部分は「上位者に聞く」で流す
それでは、それぞれの内容をみていきます。
① 一つの文章で、一つの指示を
繰り返しになりますが、チェックシートはただでさえ読むのが面倒だと思われています。
たとえば、もらったチェックシートにこのように作業指示が書いてあったらどうでしょうか。
「資料を受け取ったら封筒の上を切り取って内容を確認し、リストと内容を照らし合わせたら日が早い順にファイルに保存する」
一度読んで、やることがすっと頭に入ってきましたでしょうか。
そもそも、このように書かれると、文章が長ったらしくて、もう読むのも嫌ですよね。
一つの文章にたくさんの指示や意味を込めると、それらの指示を理解してもらうのに時間がかかります。
最悪の場合、書いてある内容を誤解されてミスが起きてしまうことも。
基本的に「チェックシートやマニュアルを読みたいです!」と意気込み、好き好んで読んでくれる人はまずいません。
そういう方にも読んで成果を出してもらうためにも、なるべくで構いません、一つの文章には一つの指示だけにしましょう。
② パワポ作りを意識する
パワポ(=PowerPoint)などでプレゼン用の資料を作る状況を想像してみてください。
普通、パワポのスライドを文章でぎっちり埋めませんよね。
むしろなるべく文章の良を減らしてポイントを洗い出し、箇条書きで表現するのではないでしょうか。
チェックシートづくりの際にも、このパワポづくり・箇条書きを意識しましょう。
次の文章のどちらが読みやすいか、ひと目で分かると思います。
・出口を出たら右に行き、突き当りの角を左に曲がると
ゴミ置き場があるので、 棚の上段から4段目に燃えるゴミを置く。
・出口を出たら右に行く。
・突き当りの角を、左に曲がる。
・燃えるゴミを置く。
置き場は、ゴミ置き場の棚の、上から4段目。
先ほどみた①のコツにも通じる部分があります。
箇条書きを意識しないと、どうしても文章の量が増えてしまいがちです。
結果、チェックシートの文章の密度が高くなって “ぎちぎち” 感が出てしまいます。
結果、読む人に、チェックシートを読む面倒さ・億劫さを感じさせてしまいます。
作業の指示の表現を箇条書きにしたり、もしくは箇条書きを意識するだけで、分かりやすさ具合がかなりアップするチェックシートになります。
③ 熟語は使わず、くだけた表現・話し言葉を
チェックシートを作ろうとすると、なぜか皆さん、気合いが入って、つい、いつもは使わない熟語やかたい表現を使ってしまいがちです。
たとえば、チェックシートに書く指示を次のように書いてしまいがちです。
・不燃物及び可燃物を分別する
これを読んだ時に、おそらく頭の中でこのように変換をしていませんでしたでしょうか。
不燃物 → 燃えないゴミ
及び → と
可燃物 → 燃えるゴミ
分別 → 分ける
このように、普段使わない言葉でチェックシートを書くと、読み手が毎回頭の中で、自分が普段使っている言葉にその都度変換して理解しようとします。
結果、チェックシートを読むのに負担を感じさせてしまいます。
そこで、チェックシートの文章はかしこまったものではなく、普段話す表現やくだけた表現を使って、このように書いてしまいましょう。
・燃えるゴミと燃えないゴミを分ける
先程の文章に比べて、書いてある指示がすっと頭に入ってきませんでしょうか。
チェックシートを使う人は、その作業を初めて行う人であることがほとんどです。
読む人のことを考えて、なるべくでかまいません、熟語や硬い表現を使わないように意識してみましょう。
④ 最も効率の良い手順を書き出そうとしない
チェックシートを作ろうとすると、つい意気込んで、最も効率の良い手順で作業を行える最高のチェックシートを作ろうと思ってしまいます。
しかし、一発で最高のチェックシートを作ることは、私ですらいまだにできません。
むしろ「最も効率の良い手順」を考えるあまり、時間がかなりかかってチェックシートづくりが進まずに挫折してしまう可能性が高くなります。
そこで、チェックシートをつくる時にはこの方法で作ってみましょう。
・普段やっていることを、やっている順に、やっている通りに書き出す
チェックシートは、作業を思い出しながら作るのではなく、作業をしながら作るべきなのです。
まずはチェックシートの叩き台を作る感覚で、普段やっている自分の手順を洗い出しましょう。
これが、「最も効率の良い最高のチェックシート」を作るコツです。
⑤ 指示は形容詞ではなく数字を使う
これはすでにお伝えした「行動化」の話に近いです。
「なるべく早く資料を郵便で送る」と書くよりも、「資料を作った日の翌朝10時までに郵便で送る」と書いた方が、誰もが同じ成果を出せるのではないでしょうか。
形容詞を使うと人によって判断が分かれてしまいます。
「なるべく早く」が、「今週中」なのか「今から10分以内」なのか、読んだ人の感覚や解釈によって決まってしまうからです。
しかし、数字を使うと判断基準が統一されます。
「5分以内」と書いてあったら、日本語を読める人であれば誰もが「5分以内」に行動をとろうとするはずです。
ただし、数字を使うことについても気を付けるべきことがあります。
それは、「割合」を使ってはいけない、ということ。
「資料作りが80%終わったら上司に出す」と書いても、80%という割合がどの程度なのかがはっきりしません。
この「割合」でも動ける人もいます。
それは、一度その仕事をやったことがある人だけです。
チェックシートを使ってその仕事をする人は、基本的には初めてその仕事をする人です。
そのチェックシートに「割合」は使わないようにしましょう。
⑥ パソコン操作は「 → 」ですっきり
パソコンに限らず、機械操作のチェックシートなどでも使えるコツです。
たとえば、私たちの業界では会計ソフトをよく使います。
この使い方のチェックシートを作る時に、クリックする順序をだらだら書くと文章に “ぎちぎち” 感が生まれ、読むのを億劫がられる傾向があります。
たとえば、このような文章です。
・画面左上の「ホーム」をクリックしたら、「バックアップ」をクリック
し、次に「保存」ボタンを押す
そこで私は、パソコン操作のチェックシートは次のように書きます。
・画面左上の「ホーム」
→ 「バックアップ」
→ 「保存」
こう書くとスッキリ見えて、何を押して作業がどこまで進んだかがとても分かりやすくなります。
チェックシートに連続した複雑な操作などを書く場合には、「→」などの記号で表現することがおすすめです。
⑦ 難しい部分は「上位者に聞く」で流す
チェックシートを作っていくと、時に、経験者が判断しなければならない作業が入ったり、選択肢が分かれたりして書き進められなくなることもあります。
これは、チェックシート作りを挫折してしまう一要因でもあります。
しかし、そのカベを避け、チェックシートを作り進める方法があります。 それが、「上位者に聞く」という一文。
「上位者」という言葉は普段あまり使わない言葉ではあるので、これが分かりづらければ、「担当者に聞く」とか「上司に聞く」と書いておきましょう。
「天野に聞く」など、担当の個人名を書いておくとよりスムーズです。
こうしておけば、とりあえずその作業は放っておいて、チェックシートを作り進めることができます。
判断の分かれるところは担当者やその仕事ができる人に任せ、それ以外の作業的な仕事を人に任せることができます。
以上、7つのコツをご紹介してきました。
これらに気を付けるだけで、最初は意識をするだけでもかまいません、作ったチェックシートがかなり読みやすいものになるはずです。
ぜひあなたのチェックシート作りに活かしてください。